参院選の仕組みとは?比例の投票方法や衆院選との違いもわかりやすく解説

参院選の仕組みとは?比例の投票方法や衆院選との違いもわかりやすく解説

任期は6年なのに、3年おきに選挙がある参院選の仕組みはよくわからないという人も多いですよね。

同じ国政選挙でも、比例代表の投票方法が衆院選とは違ったり、特定枠や合区といった聞き慣れない言葉も多い参議院議員の選挙制度。

この記事では、そもそも参院選とはどういう仕組みなのか、投票方法はどうなっているのか、衆院選とはどう違うのかや広島の選挙区事情など、みなさんの気になるけど今さら聞けない疑問にお答えします。

参院選とはどんな仕組みなのか?

参院選とはどんな仕組みなのか?

まずは、参院選の仕組みとはどういうものなのか、制度の概要をまとめて見ていきましょう。

任期は6年、3年毎に半数を改選

参議院議員の任期は6年です。しかし、3年ごとに半数を改選するため、参院選は3年おきに行われます。

衆議院や地方議会などの議員選挙では全議席が一度に改選されますが、参議院だけが半数ずつ改選を行う背景には、参議院という議会の性質が関係しています。

参議院は、「良識の府」という別名もあるように、長期的な視野で安定して物事を考えるという特性を持っています。

任期が6年と長く、解散で急に選挙が行われることもないので、その時々で世論に流されにくいことがその理由です。

選挙期間は17日間

参院選の選挙期間は17日間です。

基本的に日本の選挙では投票日が日曜日であるため、逆算して木曜日が公示日となります。

参議院議員選挙の場合、選挙区では1つ(合区の場合は2つ)の都道府県全域での選挙であり、比例代表も全国区のため、ある程度長い選挙期間が必要になるわけですね。

選挙区制と比例代表制の並立

参院選は、選挙区制と比例代表制に議席を分けて行われます。この構図自体は衆院選の小選挙区比例代表制と同じですね。

衆議院の小選挙区比例代表制とはどんな制度だったかを確認したい方は、下記の記事でわかりやすく解説しているのでぜひご覧ください。
小選挙区制とは?小選挙区比例代表並立制や広島の選挙区割りも解説

参議院議員選挙では、都道府県全体を選挙区とする選挙区制(合区である島根・鳥取と徳島・高知を除く)と、日本全国を1つのブロックとする比例代表制に分かれています。

それぞれの特徴については、次項から詳しく見ていきましょう。

参議院の選挙区は一部を除き1都道府県で1区

参議院の選挙区は一部を除き1都道府県で1区

参院選の選挙制度のうち、まずは選挙区制から内容を解説していきます。

参議院の各選挙区の定数

参議院の選挙区は、合区となっている「島根・鳥取選挙区」と「徳島・高知選挙区」を除き各都道府県で1選挙区、合計45区の選挙区で構成されています。

それぞれの選挙区について、定数をまとめたのが下記の表です。

定数

選挙区

12

東京

8

埼玉、神奈川、愛知、大阪

6

北海道、千葉、兵庫、福岡

4

茨城、静岡、京都、広島

2

青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、栃木、群馬、新潟、富山、石川、
福井、山梨、長野、岐阜、三重、滋賀、奈良、和歌山、鳥取・島根、岡山、
山口、徳島・高知、香川、愛媛、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

なお、参議院議員は合計248名であり、そのうち100人が比例代表、148人が選挙区で選出されます。

参議院選挙区の合区とは

参議院の選挙区は、前述のとおり原則的に各都道府県で1選挙区となっています。

しかし、下記の4県については、隣接する県同士で合わせて1つの選挙区となっており、これを合区といいます。

  • 鳥取・島根
  • 徳島・高知

参議院で合区が設置されたのは、2016年の参院選からです。

2013年の参院選では北海道選挙区と鳥取県選挙区で最大4.77倍だった1票の格差を是正することを目標として設置されました。なお、この2013年の参院選での1票の格差は、最高裁により違憲状態として判決がくだされています。

1票の格差と違憲状態については、それぞれ下記の記事で詳しく解説しているのでぜひ併せてご覧ください。

当初は合区によって1票の格差を最大2.97倍まで抑えられる見込みであり、実際に2016年の参院選では1票の格差は、最大で埼玉県選挙区と福井県選挙区の3.08倍となっています。

2025年の参院選の改選定数は?

直近の2025年の参院選では、下記の表の通り、各選挙区で半数の改選となっています。なお、東京都選挙区については、改選となる候補者の他に、欠員1名の補欠選挙も含めて合計7名が当選する形です。

定数

選挙区

6(欠員1も含めて7人が当選)

東京

4

埼玉、神奈川、愛知、大阪

3

北海道、千葉、兵庫、福岡

2

茨城、静岡、京都、広島

1

青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、栃木、群馬、新潟、富山、石川、
福井、山梨、長野、岐阜、三重、滋賀、奈良、和歌山、鳥取・島根、岡山、
山口、徳島・高知、香川、愛媛、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

参院選の比例代表制の仕組み

参院選の比例代表制の仕組み

続いては、参議院の選挙制度のうち、比例代表制について見ていきましょう。衆議院とは違いがあるため注意が必要ですね。

そもそも比例代表制ってどういう仕組みなのか、自信がない人は、下記のページで詳しく解説しているのでぜひご参照ください。
比例代表制と選挙区制の違いをわかりやすく解説

参院選の比例区は全国が対象の全国比例

参議院の比例代表は、日本全国を1ブロックとして実施されます。

そのため、「投票したい政党に自分の選挙区・ブロックで投票できない」という事態が起きにくいという点が特徴です。

また、その一方で膨大な数の候補者が立候補するため、1人1人の候補者を把握しにくいという難点もあります。

参院選比例区の非拘束名簿式の仕組み

参院選の比例では、非拘束名簿式という方式が取り入れられています。

非拘束名簿式では、原則として政党が立候補者の当選する優先順位を設定せず、政党が獲得した議席に対して、候補者がそれぞれの得票数が多い順に当選します。つまり、当選順位(名簿順)を拘束しない、という意味ですね。

そのため、当選してほしいと思った候補者に対して直接票を投じることができます。

非拘束名簿式の参院選での投票は、「政党名」もしくは「候補者名」の好きな方で投票することができ、下記の流れで当選者が決定されます。

  1. 各政党の得票数を算出する。
    このとき、候補者名での投票は所属政党への票として計算する。
  2. 算出した得票数に基づき、ドント式で各政党の獲得議席を算出する。
  3. 候補者名で投票された各候補者の得票数を算出する。
  4. 手順2で算出した各政党の獲得議席に、手順3で算出した得票数の多い順に候補者を割り振る。

なお、比例代表制の議席計算で導入されているドント式という計算方法については、下記の記事で計算例とともにわかりやすく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。
ドント式とは?簡単な計算方法やメリット・デメリットもわかりやすく解説

なお、SNS上などで散見される間違いに、「比例代表の投票は、候補者の名前で投票すれば、候補者に1票と政党に1票の合計2票分になる」というものがありますが、これは間違いです。

政党の議席を計算する際には候補者の名前を政党名に読み替えて計算し、その後候補者ごとに得票数を計算するだけなので、確かに2回の計算で使われはしますが1票分に違いはありません。

また、非拘束名簿式では、候補者の名前で投票した場合でも政党の議席獲得に影響するため、すでに全国規模で知名度のある人を候補者として擁立するタレント候補と相性が良いという特徴があります。

直近の全国比例に出馬したタレント候補と呼ばれる顔ぶれとして、下記の方々が挙げられますね。

[bo1_list]

  • 今井絵理子氏(自民・2016年)
  • 山本太郎氏(無所属→れいわ・2019年)
  • 水道橋博士氏(れいわ・2022年)
  • 中条きよし氏(維新・2022年)
  • ガーシー氏(N党・2022年)

[/bo1_list]

参院選の特定枠とは?

参院選の比例区では非拘束名簿式が導入されているため、原則的に政党の意向に関係なく得票数多かった順に候補者に議席が割り当てられます。

しかし、例外として各政党で最大2名まで、比例代表で議席を獲得した際に、個人の得票数とは関係なく優先的に当選する候補者を定めることができるという制度が特定枠です。

特定枠の活用有無や、1名なのか2名なのかは各政党が決めることができます。

特定枠の制度が始まったのは2019年の参院選からで、2016年の参院選から島根・鳥取と徳島・高知の2つの合区が設置されたことにより、一方の県の選出議員・候補者があぶれてしまうことの解消として導入されたという背景があります。

なお、特定枠の候補者は個人への投票と関係なく党内では優先的に当選するため、候補者自身の選挙運動はできず、あくまで政党の選挙運動をおこなうという制限が、公職選挙法の第141条や第142条などで定められています。

参院選の投票方法は?選挙区と比例それぞれを解説

参院選の投票方法は?選挙区と比例それぞれを解説

続いては、あなたが実際に参院選で投票をする際に、どのように投票すればいいのかについてご紹介します。

なお、住民票がある自治体とは別の自治体で投票したい場合などは、不在者投票制度によって住民票のある自治体にて投票が可能です。

不在者投票については、下記の記事で手順を詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください
不在者投票のやり方は?いつからいつまで請求できるかも解説

参院選の選挙区での投票方法

参院選の投票所で渡される1枚目の投票用紙は、選挙区の投票用紙です。

選挙区での投票は、投票用紙にその選挙区の立候補者の名前を記載して行います。

政党名や他の選挙区の候補者名などを記載すると、無効票となってしまうため注意してください。

自分の投票が無効票にならないか不安、という人は、下記の記事で無効票になる場合と正しい投票用紙の書き方をイラスト付きでわかりやすく解説しているので、投票の前にぜひご覧ください。
選挙で無効票になるのはどんな票?白票を投じる意味や画像例も

参院選の比例代表の投票方法

選挙区の投票をしたあとに渡される2枚目の投票用紙が、比例代表の投票用紙です。

参議院の比例代表は、立候補者の名前もしくは政党の名前を記載して投票します。

どちらで記載するかは自由ですが、特定の立候補者を応援したい場合は、立候補者の名前を記載することで、政党内での得票数の順位が上がるため、その立候補者が当選しやすくなります。

一方で、ある政党を応援したけれど投票したい特定の立候補者がいないという場合や、同じ政党内で複数の立候補者のうち誰に投票するか迷っている場合などは、政党名で投票することも有効です。

衆院選と参院選の違いとは?

衆院選と参院選の違いとは?

同じ国政選挙でも、衆院選と参院選では制度に違いがあります。その違いをまとめたのが下記の表です。

 

衆議院

参議院

選挙区

289の小選挙区

合区(島根・鳥取と徳島・高知)とその他各都道府県で45の選挙区

比例代表の当選順

拘束名簿式

非拘束名簿式と特定枠

比例代表の投票方法

立候補者の名前

立候補者もしくは政党の名前

比例代表のブロック

全国で11ブロック

全国で1つのブロック

被選挙権年齢

25歳

30歳

任期

4年(解散あり)

6年(3年ごとに半数改選)

重複立候補

できる

できない

これらの違いの理由は、日本の二院制における衆議院と参議院の違いに起因しています。

参議院は解散がない上に任期が6年と長く、長期的な視野で継続的に物事を検討できるほか、半数ずつの改選なので空白期間が生まれないで安定した政治に繋がります。

一方の衆議院は任期が4年と参議院より短く、解散もあるため、その時々の問題や世論に沿った議論ができるという特徴があります。そのため、より時勢を反映する衆議院には、下記のように参議院よりも強い権限があり、衆議院の優越と呼ばれています。

  • 予算の議決が割れた場合には衆議院の議決になる。
  • 条約の承認の議決が割れた場合は衆議院の議決になる。
  • 内閣総理大臣の任命の議決が割れた場合は衆議院の議決になる。
  • 法律案の再議決で、衆議院の3分の2以上が賛成して再可決した場合はその法律案が法律になる。

参議院広島県選挙区ってどんな選挙区?

参議院広島県選挙区ってどんな選挙区?

参議院広島県選挙区は、定数が4議席で、毎回の改選数は2議席となっています。

1950年の第2回参議院議員選挙から、長年にわたり与野党で2議席ずつ(改選1議席ずつ)を分け合う形が続いていたという点が特徴的ですね。

しかし、2019年の参院選でおきた大規模買収事件にて自民党から当選した河井案里氏が辞職し、2021年の4月に行われた再選挙では結集ひろしまから出馬した宮口治子氏(立憲民主党、2025年1月に離党)が勝利したため、2021年4月から2025年現在までは野党が3議席、与党が1議席という状態になっています。

2025年の改選議席は、まさに2019年と同じ改選議席となっており、現職の森本真治氏(立憲民主党)と、与党の自民党を含む新人候補での選挙戦が見込まれます。

期間の長い参院選、ぜひ一度情報を見てみては?

参院選は全国比例の影響もあり、様々な候補者からの発信が広島にも届く大きな選挙です。

まさにお祭りという感じですね。

選挙期間も比較的長いので、ぜひ一度、立候補者や政党の情報に触れてみてください!

よくある質問

参院選の投票方法は?

参院選では、1枚目の投票用紙である選挙区の投票では、立候補者の名前を記載して投票します。

2枚目の投票用紙である比例代表の投票では、立候補者の名前もしくは政党の名前を記載して投票します。

参院選の比例は候補者名で書くと2票分になる?

立候補者名で投票しても、政党名で投票しても同じ1票です。

あくまで、政党の議席獲得数と特定の立候補者の当選しやすさに影響するだけであり、2票分の価値を持つことはありません。

参議院の特定枠ってなに?

参議院の比例代表制において、原則として得票数順に当選する立候補者のうち、優先的に当選する立候補者を指定できる制度です。

各政党が2名まで指定でき、指定の有無や人数は各政党に決定権があります。

2016年の参院選で島根・鳥取と徳島・高知が合区になったことで、一方の県の立候補者があぶれてしまう状態を解消するため、2019年の参院選から導入されました。

この記事を書いた人

武本 裕紀

武本裕紀は、Youth Vote! HIROSHIMA 発起人・共同代表。広島在住でSEO・Webマーケティングの実行支援を行うフリーランス。東広島市明るい選挙推進協議会理事。 大学進学で広島にやってきて今に至る。 在学中の経験から政治に興味を持ち、政治家の広報を手掛けたり選挙を手伝うなど様々な現場を経験。 気軽に政治に触れられる機会が足りないとの思いから2021年9月にYouth Vote! HIROSHIMAを設立。
著者情報ページ

この記事を書いた人

武本 裕紀

武本裕紀は、Youth Vote! HIROSHIMA 発起人・共同代表。広島在住でSEO・Webマーケティングの実行支援を行うフリーランス。東広島市明るい選挙推進協議会理事。 大学進学で広島にやってきて今に至る。 在学中の経験から政治に興味を持ち、政治家の広報を手掛けたり選挙を手伝うなど様々な現場を経験。 気軽に政治に触れられる機会が足りないとの思いから2021年9月にYouth Vote! HIROSHIMAを設立。
著者情報ページ

この記事のタグ一覧